会期:1996年10月3日(木)〜10月14日(月)
    (AM10:00〜PM7:00)
会場:神戸アートビレッジセンター
    (KAVCギャラリー B1/KAVCシアター)


神戸アートアニュアル'96によせて

 20世紀末を迎えて、急速に世界の構造が変わりつつあり、私たちは未来を予測することが困難な状況におかれている。また、飛躍的に成長した高度情報化社会において、個人や社会全体の価値観がますます多様化し、従来の「芸術の本質」といった概念が足元から揺らいでいることに気づき始めている。いま、根源的な人間の在り方を見つめることが希求されているなかで、20代を中心とした若い世代の作家達が、どのような考え方のもとで新しいアートを産みだし、どのような展開をしていくのだろうか。
 この国の文化は古くからアジアに学び、近代になって性急に欧米文化を吸収することで、まさにハイブリッドに形成されてきた。とくにアートにおいては作品を解釈し、歴史に残していく作業が、欧米中心の思考で行われてきた。しかし、西洋から多くを学んだアートにおける価値観や受けとめ方も、今日では、外からと内からとの視点によって組み替えられ、日本の中から出てくる新しいアートの在り方を提案することが求めれられている。
 日本の現代美術は、合理性や自己証明といった知の概念やテクノロジーを受け入れ利用してきたが、一方で西洋の概念では計り切れない、あいまいで不可思議な空間や時間の概念を身に付けており、テレビ、アニメ、ファミコンといったメディア文化で育った個性は、異文化も平気で取り込んで、いい意味でも悪い意味でも、既存の価値観に捕らわれない世界観を共有する世代が登場している。ここで紹介されている作家達の用いる表現は、インスタレーションを中心に、絵画、ドローイング、写 真、オブジェ、ヴィデオと多岐にわたっている。都市生活の陰でともすれば無視されてきた人間の感傷、友人や家族との想い出、個人的な感覚の羅列と治癒、社会的な規範へのストレス、過去の記憶への哀愁、そして黙示的な様々の神話について語っている。私たちの脳裏から離れない、この世の中で意味をなさない事柄に出会った時、それを理解するための手掛かりとなるこれらの物語や物体、記号は、不確かな時代にあって個々の相違を形成するものであり、普遍的なテーマを内包している。他者の作品から固有性の差異を見出し、互いの概念を応用して自己を確立することや、既成概念にとらわれない開かれた状態で敏感にしておくことが重要な意味をもっているはずである。
 この展覧会は間もなく訪れる21世紀へ、創作活動を始めた作家達が、現代社会の抱えるさまざまな問題を象徴的に映し出し、様々な切り口で私たちのものの見方を変えようとする試みであり、将来の可能性を感じさせる若いエネルギーに満ちている。また、復興始めた神戸に集い、来るべき世代に現前するであろう希望と不安を、どのように勇気を持ってつなぎとめることができるのか、興味深く期待をもって立ち合いたい。

美術作家、Kobe Art Annual Project 実行委員 長尾浩幸


・池上恵一
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